映画レビュー:ロバーツとクルーニー、『チケット・トゥ・パラダイス』で再共演
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楽しい現場で制作された映画は偉大な作品にならないとよく言われる。しかし、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツについていえば、インドネシア・バリ島を舞台にした映画『チケット・トゥ・パラダイス』の制作において楽しい時間を過ごしたようだ。
2人の共演は、『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー(2018年)』監督のオル・パーカーがオリジナル共同脚本と監督を務めた本作品以前にもあった。とはいえ少し記憶をたどると、『オーシャンズ11(2001年)』や、それほど記憶に残っていないジョディ・フォスター主演のサスペンス映画『マネーモンスター(2016年)』での一部シーンに限られていた。
2人はプライベートでも仲のいい友人であることからすると、これまでに数多くの共演ロマンチックコメディがあったのではと思ってしまう。ただ、ケーリー・グラントと比較されることの多いクルーニーがコメディに出演すると、コーエン兄弟が制作した作品に出てくるような弓矢の達人を連想してしまう。アイリーン・ダン、キャサリン・ヘップバーン、ロザリンド・ラッセルといった豪華な女優たちとの共演でロマンス映画に出演したグラントとは異なり、クルーニーにぴったりの相手はそれほど多くなかった。あえていえば、『マイレージ、マイライフ(2010年)』のヴェラ・ファーミガ、『ファンタスティック Mr.FOX(2011年)』のメリル・ストリープくらいだ。だが実際、クルーニーにとって最も相性が良かったのは、暗い車のトランクの中で芽生えたロマンスを描いた『アウト・オブ・サイト(1998年)』で共演したジェニファー・ロペスだった。
『チケット・トゥ・パラダイス』はいくぶん古風な作りとなっており、2人のスター俳優のカリスマ性を(何ら悪びれることもなく)前提として組み立てられた作品である。
ジョージア(ロバーツ)とデヴィッド(クルーニー)は元夫婦で、ロースクールを卒業したばかりの一人娘、リリー(ケイトリン・デヴァー)がいる。リリーは一流の法律事務所で厳しい仕事に打ち込む前に、親友のレン(ビリー・ロー)と一緒にバリ島へ旅行する(実際の撮影地はオーストラリア)。やがてリリーは地元で海苔を養殖している若者グデ(マキシム・ブティエ)と恋仲になり、数日で結婚すると言い出す。
ジョージアとデヴィッドからすれば、そのような結婚は許されるものではなかった。結婚を阻止しようと2人はすぐに飛び立つが、その行動自体が未解決の離婚問題を蒸し返すものだった。「永遠には続くものなど何もない」と、デヴィッドは義理の息子になろうとしているグデにささやく。よろしくない組み合わせだ。元夫婦は喧嘩ばかりしているが、その分、お互いへの思いがまだ強いことが分かってくる。そう、『チケット・トゥ・パラダイス』の舞台で起きることが改めて2人の距離を縮めていくのだ。
さて、オル・パーカーとダニエル・ピプスキーの共同脚本による本作品だが、筋が分かりきった作品の焼き直しではない。本作は予測できることが魅力のひとつであり、うまくいったといえるのではないか。まるで決められた儀式のように、ヒップホップグループのハウス・オブ・ペインによる「Jump Around」とともに尻込みするような深夜のダンスフロアのシーンが現れる。
元夫妻がバリの文化に戸惑いつつも、必然的にそれを受け入れていく様子が描かれる本作には、ほかにも地元の風習がいくつか盛り込まれている。だが、ロマンチックコメディによくある話ほどは多くない。私からすれば、最近の同ジャンルの多くの作品と同様に、本作も面白い人が脚本を担当していたら得るものが多かったと思っている。ここには期待するほどの楽しさはない。なぜなら『チケット・トゥ・パラダイス』は、ゆったりとくつろぐ海水浴客が日光浴をするように、スター俳優の輝きを浴びることでおおむね満足する作品だからである。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2020年)』でヒステリックな役を演じたケイトリン・デヴァーも無難な役どころで無駄が多い。
本作品は、ジュリア・ロバーツがこれまで出演した多くの優れたロマンチックコメディ映画の付け足し的な扱いとみなされよう。南国のジョージ・クルーニーであれば、アレクサンダー・ペインが監督を務めた『ファミリー・ツリー(2011年)』を選ぶ。謀をめぐらす離婚者役のクルーニーであれば、キャサリン・ゼタ=ジョーンズと共演したジョエル・コーエン監督の『ディボース・ショウ(2004年)』をお薦めしたい。
だが、ロバーツとクルーニーの共演を見たいだけであれば、『チケット・トゥ・パラダイス』はそれほど高くもないハードルを十分な魅力でクリアするだろう。最後に誤解のないように言っておくと、本作のエンドロールで流れたNG集などは『トイ・ストーリー2(1999年)』のラストを思わせるほどの内容で、『チケット・トゥ・パラダイス』の制作現場がじつに楽しいものであったかを教えてくれる。
東宝東和配給の『チケット・トゥ・パラダイス』は、上映時間は1時間44分。2022年11月3日(木)より公開。
By JAKE COYLE AP Film Writer
Translated by Conyac