暗号資産の新たな詐欺「ラグプル」を回避する方法

Rick Bowmer / AP Photo

 過剰な宣伝で賑わう暗号資産の世界に、新種の詐欺「ラグプル」が現れた。

「pulling the rug out(絨毯を引き抜く)」を語源とするこの詐欺では、目新しい暗号資産プロジェクトで投資家を惹きつけた開発者がプロジェクト構築前に手を引き、投資家には価値のない資産が残される仕組みとなっており、投資スキームとしては以前からあるものだ。

 ヒューストンでデジタル資産を専門としている公認ファイナンシャルプランナー(CFP)のアダム・ブラムバーグ氏は「これは暗号の世界に限った話ではなく、人間が関係する現象である。新たに用いられる手段が暗号であるに過ぎない」と述べている。だが、暗号資産は資金調達に関する規制が緩いほか、分散化を重視していることに起因する独特のリスクがある。

 暗号資産のプロジェクトでは「スマートコントラクト」がよく用いられる。法制度ではなく、コンピュータソフトウェアによって管理されるこの契約の仕組みは取引コストの削減というメリットをもたらすものの、問題が発生したときの救済措置が限られている。

 銀行や保険などの金融サービスをディスラプト(破壊)することを目的とする分散型金融(DeFi)プロジェクトでは、ラグプルがとくに多く見られる。アートなどのコンテンツのデジタル所有権を与える非代替性トークン(NFT)でも、ラグプルに関連する動きがある。

 投資家は定評のある暗号資産プロジェクトを選び、新たなプロジェクトのコードがレビューされていることを確認し、開発者の身元を検証することで身の安全を確保することができる。

◆定評のある商品の選択
 ラグプルが頻繁にみられるのは、評価の確立された暗号資産と同程度の精査がなされていない最新のプロジェクトだ。

 ビットコインにもリスクはあるが、世界で無数の人がこれを利用し、その内部構造が検証されているほか、ネット上で手軽に利用できるという特徴がある。

 新手のプロジェクトにはそうした実績がないため、主宰者が投資家から価値をかすめ取り、自分の利益にできてしまうという脆弱な部分があるようだ。

 こうした流行りの現象に対処するのが難しい場合、バイナンスやコインベース、FTXといった中央集権的な取引所を利用し、定評のあるプロジェクトを見出すのも一考である。大手の取引所に暗号資産があるとはいえ、それで品質や投資の潜在性が保証されるわけではないものの、資産は販売前に審査されていることが多い。

 確立された資産をメインに投資することに関しては、トレードオフが存在する。大まかに言えば暗号資産でも価格が高騰する場面はあったが、最も高い報酬が得られる投資とは、リスクも高い最新のプロジェクトだろう。こうしたプロジェクトは「分散型取引所」に上場されることが多く、実績のないプロジェクトの参加を寄せつけない中央集権的な取引所に向かうことはない。

 この分野でプロジェクトを検証する業務を行っているDeFiSafetyの創業者であるレックス・ハイゲート氏によると、成功確率は低いがゾクゾクするほどの報酬が得られる機会を失うかもしれない、という恐怖心を食い物にできるのが詐欺師だという。

 同氏は「確かに魅力的な投資だ。多くの人が財を成したという実績もある」とした上で、「限られているとはいえ現実的に希望はあるため、犯罪組織が組織的にそして定期的にラグプルに手を出している」と述べている。

◆コードの知識
 暗号資産やブロックチェーン・プロジェクトに対する投資の命運は、プロジェクトのコンピュータ・コードが完全であるか否かにかかっている。投資家はコンピュータのプログラマーでなくとも、事前に投資対象の仕組みについて最低限理解しておくべきだ。

 これから行う投資先の評価が自分でできない場合は、業界で定評のある専門組織の監査を受けているかどうかを確認するとよい。監査人から優れた評価を取得したプロジェクトであれば、その結果を積極的に公表しているだろう。

◆人の調査
 暗号資産の世界における最大の危険信号は人的な要素であることも少なくない。暗号資産で偽名を使う人もいないわけではないが、優れた評判を持つ開発者のなかには、ウェブサイトやリファレンスで自分が信頼に足る人物であることを明らかにしている人もいる。

 だが、自分で調べたとしても、それで投資が成功する保証はない。たとえば、最新プロジェクトをレビューしている『Rugdoc.io』の創設者などは、イベントチケットが約束されたNFTで詐欺に遭ったことがあるという。

 暗号資産では、ほかの金融商品と同じく分散投資が重要である。たとえ悪意がなくても、技術的な不具合や業務上の不手際でプロジェクトが失敗してしまうこともある。

 報復を企む詐欺師から身を守るために本名を明らかにしなかった創設者のリアは、「何であれ投資対象に問題が発生することを予期しなくてはならない」とした上で、「失敗を想定して、実際にそれが起きなければ幸せな一日を送れる。たとえ失敗したとしても、おそらく身を破滅させることにはならないだろう」と述べている。

By ANDY ROSEN of NerdWallet
Translated by Conyac

Text by NewLuxe 編集部