世界の危険なダム10選 老朽化、不安定な地盤、侵入事件も

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 力強い容貌で見る者を圧倒し、治水や発電に重要な役割を果たす巨大ダムは、自然の脅威から生活と安全を守る要だ。その一方、適切な運用とメンテナンスが行われなければ決壊の恐れがあるほか、そびえ立つ堤体には転落の恐れもつきまとう。世界の危険なダム10選をご紹介しよう。

◆1.モスルダム(イラク)

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 モスルダムは、ティグリス川にある国内最大級のダムで、1980年代に運用が始まった。危険性が指摘される最大の理由は、ダム基礎に石こうや硬石こうなど溶けやすい地層があり、浸透水で溶解が進むと空洞や亀裂が生じ、漏水や沈下(シンクホール)につながり得る点だ。

こうした問題は貯水開始後から続き、止水のための注入(グラウチング)が欠かせない“維持管理前提”の構造とされてきた。研究報告でも、注入は有効でも恒久対策になりにくいとされ、長期的な安全確保には継続監視と追加策が重要だと位置づけられている。

◆2.フーバーダム(アメリカ)

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 フーバーダムは、ネバダ州とアリゾナ州の州境にあるコロラド川をせき止めた重力式アーチダムで、1931年に着工し1936年に完成した。世界恐慌期の公共事業として建設され、下流域の洪水調節、ロサンゼルスなど西部の水需要への供給、巨大な水力発電を担ってきた。貯水池はミード湖で、完成当時は世界最大級の人工湖として知られた。

 「危険性」が語られる場面では、堤体そのものの脆弱性よりも、近年の水不足が象徴的だ。アメリカ西部の長期干ばつでミード湖の水位が低下し、発電量の減少や取水制限の議論が続いている。貯水が減れば洪水調節や発電、利水の余裕が小さくなり、極端な渇水・豪雨の両面で運用が難しくなる。また、ダムは重要インフラであり、事故や攻撃が起きた場合の影響が大きい点も常に意識されている。

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Text by NewLuxe 編集部