ディオール:1万9000本の花咲くショー 故・ダンカン・グラントへのオマージュ

Michel Euler / AP Photo

 花とアート、そして世界的ブランドのディオールの作品がぶつかり合い、花々の甘い香りとともにクリエイティビティがほとばしった。

 パリ・ファッションウィークに行われたディオールのショーは、ロンドンのブルームズベリー・グループの一員で1978年に死去したイギリス人画家、故・ダンカン・グラントに敬意を表した。

 デザイナーのキム・ジョーンズはダンカン・グラントの傑作を表現するだけにとどまらず、制作活動中に実際に着ていた服を模して、画家の世界を再現した。たとえば、麦わらのガーデニングハットをベースボールキャップの上にパーゴラが合体したデザインに再考。手がけたのは、帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズだ。グラントの特徴的なスーツもまた重要なテーマとして盛り込まれたが、巧みに流行を取り入れた撚りを採用し、ジョーンズ流に生まれ変わった。

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 コレクションは、グラントが全盛期を迎えた1930年の要素を多用。ゆったりとしたバニラカラーのダブルスーツには、レトロなサッシュベルトの代わりに2本のスリーブを添えた。ジャケットの下から唐突に現れるスリーブが、ルックの中心で抽象的に揺れる。別のルックではショートパンツにウエストベルトを折り返し、2度の世界大戦の狭間の当時らしいどこか垢抜けないスタイルを表現した。

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 ウールのソックスとガーデニングシューズは、多くの時間を屋外で過ごしたグラントへの共感を込めた遊び心として採用されているが、ユーモアを決して忘れないデザイナーとしてのジョーンズ自身へ向けたものでもある。コレクションのカラーパレットはグリーン、ブルー、そしてパステルカラーを用い、池のある庭の景色にマッチしていた。

 会場にはポピーや野花など、本物の植物1万9000本が敷き詰められた丘が広がる田舎風のセットが組まれており、VIPゲストはうっとりと見入っている様子だった。すべては、ほんの10分間のショーのために設営された。セットはもちろん、グラントを取り囲んでいた風景を想起させるべく作られたものである。

 ショーには、花に負けず劣らず華やかな著名人が来場。スター揃いの最前列は花びらの舞う草むらからはじまり、デビッド・ベッカムと息子のクルス・ベッカムや、ナオミ・キャンベル、J・バルヴィン、ジャスティン・ティンバーレイク、ジェシカ・ビールらが着席した。

By THOMAS ADAMSON
Translated by t.sato via Conyac

Text by NewLuxe 編集部