オム プリッセ by イッセイ ミヤケの「死に挑む」ファッション
三宅一生氏の手がけるオム プリッセはファッションとパフォーマンスの境界線を曖昧にするかのごとく、アクロバット集団を起用。体を歪め、踊り、まるで死に挑むかのような壮大なメンズショーを繰り広げた。
花や花瓶にインスパイアされたという、目を見張るような色彩をまとったモデルがパフォーマーと共演。リノベーションを経たルーブル郵便局を舞台に、ダンスを通してファッションデザインを紹介する、という繊細にして異色のショーが展開された。
ショーの最中、舞台を見下ろす中二階のような足場からダンスグループが突如登場し、観客は息をのんだ。パステルカラーのゆったりとした衣装に身を包んだパフォーマーたちはステージに上がり、まるで死を覚悟したような跳躍、落下、転倒といったアクロバティックな演目を披露。ミサイルのように宙に投げ出されたかと思えば、別のダンサーに受け止められるなど、命知らずな技の数々を見せつける。むろん、硬い石の床の上に安全ネットはない。
シャイヨー国立劇場のラシッド・ウランダン氏が演出を担当。アクロバット集団「Compagnie XY」による見事なショーだった。
それに比べると、ファッション自体は柔らかい印象に。ネックとミッドリフ(胴部)の緩やかなカーブは花瓶をモチーフにしており、程よい重みがダイナミックなシルエットを生み出している。パステルレッドのプリーツチュニックとショートジャケットを合わせ、アジアの戦士を思わせる胸元のパネルがポイント。鮮やかなタンポポのベストには、スタッズ付きのポケットが花を開くように鎮座している。
パステルパープルと薄紅、レーズンブラックのコントラストや、パステルイエローとミッドナイトブルーなど、カラーブロッキングもまた今回の大きなテーマのひとつだ。イッセイ ミヤケのオム プリッセがパリのランウェイに戻ってきたことを強く印象付けたと言える。
By THOMAS ADAMSON AP Fashion Writer
Translated by isshi via Conyac