サイモン・クラッカー:『リアリティ・バイツ』の世界
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2010年に創設したブランド、サイモン クラッカー。パンデミックが広がるなか、デザイナーのフィリッポ・ビラーギ氏とシモーネ・ボッツ氏は方針を急転換し、アップサイクル素材のみを扱うことにした。
原料に使われているのは、古くなった綿やリネンのベッドシーツ、メンズシャツ、中古のパラシュート、新品のニットウェアを作る際に廃棄された糸、リサイクル品のジャージーなどだ。クリーニング店から持ち主不明の衣服を引き取ったり、メーカーから生地の切れ端を収集したりしてユニークな作品を生み出しており、「クラッカー・クルー」と呼ばれる支持者を増やしている。
2023年春夏コレクションのタイトルは、『リアリティ・バイツ』。X世代を描いた1990年代の映画のタイトルだが、どちらかというといまの世界情勢を表しており、さらに言えば、新進気鋭のブランドがここ最近直面している困難な状況を反映したものだ。
ビラーギ氏はバックステージで、「私たちは困難なときを生きています。『リアリティ・バイツ』は、この瞬間に私たちが経験しているもののようでもあります」と述べている。
パンキッシュなアクセントとフリルを盛り込んだ今回のコレクションについて、デザイナーは「ホリー・ホビー(アメリカの絵本作家)」と「セックス・ピストルズ」を足して二で割ったものだという。デリケートな刺繍や小さなパッチワーク、子供のいたずら書きのような模様をあしらったルックが揃った。
「洋服たちが美しく生まれたのに、噛み付かれた感じにしています」と、ボッツ氏は言う。
モデルはクラッカー・クルーから選出しており、体型も考え方もさまざまな人を集めた。
高齢の男性モデルは、ハイウエストのニットパンツをまとって登場。アクセントに赤いリボンが巻かれ、変形ジャケットから垂れ下がったオレンジ色のシルクの布が、ランウェイ上でトランス風のダンスに合わせて揺れる。廃品のメンズシャツで作ったレイヤードスカートの上にコルセットをつけた女性モデルは、ミニチュアの犬を連れて歩いた。
By COLLEEN BARRY AP Fashion Writer
Translated by t.sato via Conyac